主な原因としては、ほとんどの場合、自動車などでの追突事故等に代表されるように、頚部に大きな力がかかり、頚椎関節の正常な運動方向や範囲を超えた運動が強制されたために起こる靭帯や関節包の損傷断裂です。車の衝突事故のときに、体は前方に移動しますが、頭はとり残されるので急激に後ろにそり返り、次の瞬間前方へ曲がる状態となり、ムチのようにしなります。このとき、頚椎周囲の筋肉・靭帯・椎間板・血管・神経などの組織が損傷を起こしたものをムチウチ症(頚椎捻挫)といいます。つまりムチウチは頚の捻挫であるわけです。また自動車事故に限らず、転倒や打撃等による頭部または頚部への衝撃による事も多く、つまりムチウチは頚の捻挫であるわけです。
主な症状としては、頚椎の周りの靭帯や筋肉の裂傷、硬縮、炎症により頚部の痛みを伴い、自由に頚を動かせないなどがあります。強度のムチウチの場合には頭痛、耳なり、めまい、吐き気、肩凝り、腕や手の神経異常(しびれ・痛み・マヒ)、顔面神経異常(神経痛)、鼻詰まりなどが起こることがあります。受傷の数時間後、あるいは翌日になってうなじの痛み、熱感、頭が重い感じ、肩こりなどの症状が現れることが多いのですが、受傷直後に現れることもあります。逆に数週間から数ヶ月たった後に症状が現れることもあります。また、症状から、以下の4つの型に分類することもあります。
頚椎捻挫型
4つの型のうち最も多いもので、全体の70〜80%を占めています。頚椎をねんざしたもので、首や肩が痛くて動かしにくいといったように、寝違いや肩こりによく似た症状を示します。
根症状型
頚椎の椎間孔やその前後で、頚髄から出ている神経根が圧迫刺激されるために症状が現れるものです。首を横に曲げたり、首を回したりした時に頚部痛や腕のしびれや痛みが強くなるのが特徴です。その他、後頭部痛や顔面痛、顔にベールをかぶったような違和感などをうったえることが多いものです。
バレ・リーウー症状型(後部頚交感神経症候群)
後頚部やうなじの痛みのほか、めまい、耳鳴り、視力障害、眼精疲労、顔面・腕・のどの知覚異常、声がかすれる、ものを飲みこみにくいなどの症状があり、胸部の圧迫感などの心臓の症状をうったえることもあります。
脊髄症状型
脊髄が損傷された場合には、下肢のしびれ感や知覚異常のために歩行が障害されたり、尿や便が出にくくなったりする膀胱直腸障害が出ることもあります。
ムチウチ症の人はさまざまな症状をうったえますが、診断ではほとんど異常が認められないことが多いです。
また、ムチウチ症の約70%は適切な治療により6ヵ月以内に治りますが、それ以上たっても症状がとれないときは治りにくくなる可能性があります。 |